一級建築士事務所日本美環室

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蛍光灯の製造・輸出入禁止:施設のLED化はいつまでに何をするか

文:松野 永岬(一級建築士事務所 日本美環室 代表・設備設計一級建築士)

写真はイメージです

この記事の要点

  • 製造・輸出入の禁止は種類ごとに段階的。直管形・環形でも、ハロリン酸塩系は2027年1月1日から禁止
  • 今ある蛍光ランプの使用や、在庫品の売買は禁止されない。ただし交換用ランプは手に入りにくくなる
  • LED化は器具ごとの交換が基本。非常用照明と誘導灯は建築基準法・消防法の基準を別に確認する

工場や店舗、事務所の管理者の方から、「蛍光灯が使えなくなると聞いたが、いつまでに何をすればよいのか」と聞かれることが増えました。改修を担当する設計者や施工者からも、発注者への説明の仕方を相談されることがあります。

背景にあるのは、「水銀に関する水俣条約」です。2023年11月の第5回締約国会議で、一般照明用の蛍光ランプの製造と輸出入を段階的に廃止することが決まりました。日本でもこれを受けて政令が改正され、ランプの種類ごとに禁止の時期が定められています。

「2027年末」という言葉が広まっていますが、実は種類によってはそれより1年早いものがあります。この記事では、一次情報にもとづいて期限を整理したうえで、施設のLED化をどう段取りするかを、設備設計者の立場からお伝えします。

何が、いつから禁止されるのか

根拠となるのは、水銀汚染防止法(水銀による環境の汚染の防止に関する法律)の施行令です。2024年12月に改正政令が閣議決定され、一般照明用の蛍光ランプが「特定水銀使用製品」に加わりました。施行日は製品に応じて、2026年1月1日、2027年1月1日、2028年1月1日の3段階です。なお、輸出入の禁止は外為法(外国為替及び外国貿易法)にもとづいて規制されます。

環境省の公表資料をもとに、種類ごとの禁止開始日を整理すると次のとおりです。

ランプの種類製造・輸出入の禁止開始日
電球形蛍光ランプ(30W以下)2026年1月1日(すでに禁止)
電球形蛍光ランプ(30W超)2027年1月1日
コンパクト形蛍光ランプ2027年1月1日
直管形蛍光ランプ(ハロリン酸塩系)2027年1月1日
直管形蛍光ランプ(三波長系など上記以外)2028年1月1日
環形蛍光ランプ(ハロリン酸塩系)2027年1月1日
環形蛍光ランプ(三波長系など上記以外)2028年1月1日

施設で多く使われている直管形は、蛍光体の種類で期限が分かれます。ハロリン酸塩系は一般タイプ、三波長系は効率の高いタイプで、両者には互換性があります。つまり、同じ器具に付いているランプでも、どちらを使っているかで調達できる期間が変わります。

見分け方も公表されています。品番が「F」で始まるものが蛍光ランプです。三波長系には「3波長形」または「EX」の表示があり、これらの表示がないものはハロリン酸塩系です。海外製品は表記が異なることがあるため、分からなければメーカーや取扱店に確認してください。

使い続けることは禁止されていない

誤解されやすい点ですが、禁止されるのは製造と輸出入です。環境省・経済産業省の資料には、すでに使っている製品を使い続けることや、禁止日までに製造された在庫品を売り買いし、使うことは禁止されないと明記されています。

そのため、「期限までに全館を工事しなければ違法になる」わけではありません。一方で、新しいランプが作られなくなる以上、交換用のランプは時間とともに手に入りにくくなると考えるのが自然です。

環境省・経済産業省の周知資料は、LED照明への計画的な更新を求めるとともに、切り替えが難しい場合は、あらかじめ電気工事店などに交換用ランプの確保を相談するよう呼びかけています。すぐに工事ができない施設では、更新までの年数と交換頻度から必要な本数を見積もり、保管場所も含めて確保しておくのが現実的です。

ただ、在庫の確保はあくまで「つなぎ」だと私は考えています。ランプだけでなく、器具そのものが古くなっているケースが多いからです。

LED化の方式:器具ごと交換を基本に考える

LED化の方法は、大きく分けて二つあります。器具ごとLED照明器具に取り替える方法と、既設の蛍光灯器具を生かして直管LEDランプに差し替える方法です。

日本照明工業会は、蛍光灯器具のLED化は器具ごとの交換を推奨しています。理由の一つが、蛍光灯器具に内蔵された安定器(ランプを点灯させるための電源部品)の劣化です。同工業会は、照明器具について設置から10年を「適正交換時期」、15年を「耐用の限度」としています。

既設器具に直管LEDランプを付ける場合は、点灯方式に合わないランプを選んだり、必要な改造工事をしなかったりしたことによる事故が報告されています。改造を伴う場合は、既設器具メーカーの製品保証が受けられなくなる点にも注意が必要です。

実務では、次のような順で方式を判断することが多いです。

  • 器具の銘板で製造年を確認する。設置から年数がたっている器具は、器具ごとの交換を前提に考える
  • 天井の仕上げや下地との取り合いを確認する。器具の大きさが変わると、天井材の補修が必要になることがある
  • 回路と点灯区分を見直す。器具を替える機会に、センサーや調光の導入を検討できる
  • やむを得ずランプ交換とする場合は、器具の点灯方式に合う製品を選び、改造の要否を電気工事の担当者と確認する

非常用照明・誘導灯と照度は別に確認する

一般の照明とは別に考えるべきなのが、非常用照明と誘導灯です。非常用の照明装置は建築基準法施行令第126条の4・第126条の5で、設置と構造が定められています。誘導灯は消防法施行令第26条に基準があります。

これらを更新する場合は、一般照明のLED化と同じ感覚で器具を選ぶことはできません。それぞれの基準に適合した製品を選び、必要に応じて所管の行政庁や消防署に確認しながら進めてください。改修工事では、一般照明の工事範囲に含めるかどうかを早めに整理しておくと、後の手戻りを防げます。

照度の見直しも、LED化のよい機会です。事務所では事務所衛生基準規則第10条で、一般的な事務作業は300ルクス以上、付随的な事務作業は150ルクス以上と定められています。工場などの作業場では労働安全衛生規則第604条で、精密な作業は300ルクス以上、普通の作業は150ルクス以上、粗な作業は70ルクス以上です。

これらは下限の基準です。蛍光灯と同じ台数をそのままLEDに置き換えると、明るすぎたり、まぶしさが出たりすることがあります。作業内容に合わせて照度を計算し直し、台数や配置を決めることをおすすめします。

工期と予算を平準化する

施設全体を一度に替えようとすると、費用も工期も大きくなります。工場や店舗では、操業や営業を止められる時間が限られることも多いでしょう。

私がよくご提案するのは、フロアや系統ごとに優先順位を付けて、数年に分けて進める方法です。たとえば、ハロリン酸塩系のランプを使っている系統、点灯時間の長い系統、器具の製造年が古い系統を先に替えると、在庫の確保量も減らせます。夜間や休業日に作業を寄せる場合は、その分の工期と費用も見込んでおく必要があります。

期限が近づくほど、LED器具の需要や工事の予約が集中することも考えられます。現況の照明器具の台数・種類・製造年を一覧にするところから、早めに始めておくと安心です。

まとめ

一般照明用の蛍光ランプは、種類ごとに2026年1月1日から2028年1月1日にかけて、製造と輸出入が段階的に禁止されます。既存の蛍光灯を使い続けることは禁止されていませんが、交換用ランプは手に入りにくくなっていきます。

LED化は器具ごとの交換を基本に、非常用照明・誘導灯の基準と、作業に合った照度を確認しながら計画的に進めるのが現実的です。こうした場面で迷ったら、計画の早い段階でご相談ください。

松野 永岬

松野 永岬設備設計一級建築士/日本美環室 代表

積算事務所・設計事務所・設備工務店を経て2007年に独立。工場の耐震改修に伴う設備設計から、店舗・住宅まで幅広く手がける。プロフィール

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